こんにちは、90年代病患者のえむしです。
トレインスポッティング2を先週の土曜日、公開日に観に行ってきました。
以下感想など・・・。
はじめに
僕にとって、21年前のトレインスポッティングはこじらせていた青春そのものでした。
レントンたちのようにクスリや盗みは勿論した経験した事は無いけれど、作品の根底に流れる現実逃避への願望は当時の僕に強く影響を与えました。だからこの映画を語る時に、映画だけのことを話せません。
大学に入る前にバブルが弾けて、世は就職氷河期真っ只中。世代の人口は多いのに将来の先行きは真っ暗でした。
ネットや携帯電話が普及して世の中は急速に変化していくのに、行き場が無いから自分は変われない。「自分探し」ってワードはバカっぽいけど、働きたくても働く場所も少なくて、心身ともに消耗した人の多い時代でもあったと思います。
映画「トレインスポッティング」の4人はクスリをやってる間だけは、辛い現実も全部他人事だと言います。でも、それってクスリだけじゃなくて何かに依存している人全般に言えることで、当時の自分も現実逃避的な思考に取り憑かれて色々とフラフラ漂っていました。
そして1999年-2000年、当時はとてもカッコよかったイギリスに英語の勉強のために渡りました(今の仕事に役立っていませんが・・・)。サムネイルに使ったDVDは当時向こうで買いました。
その頃の写真とかはこちら。
黒歴史語りはここまで。
ちょっとしたあらすじと感想
今回の映画は、当時20代半ばだった逃避願望丸出しのレントン、スパッド、サイモン、ベグビーが中年になって現実から逃げられなくなり、それと対峙する話となりました。前作もダメな人間ぷり全開だったけど、若さもあってどこかカッコよかった。でも今回は皆おじさん。往生際も(見た目はかっこいいけど)かっこうも悪い大人達。
現実と対峙すると言っても連戦連敗。T2での彼らはまともに戦う事もせず、敗走してジリジリ撤退していると言った様子でした。
スパッドは前作で付き合っていた女の子、ゲイルと結婚もして子供もいたけれど、仕事をクビになって別居。そしてヤク中に逆戻り。レントンは子供もおらず、それが原因で離婚してオランダからスコットランドに戻って来るし、シックボーイことサイモンは自分の彼女を美人局に利用し恐喝してるし、ベグビーに至っては刑務所を脱走し、嫌がる大学生の息子を無理やり相棒にして盗みを働く始末。
当時は新しかった音楽もどこかノスタルジック。イギーポップのラストフォーライフもオリジナルに近いアレンジだし、タイムスリップしたような、残酷な現実を見せつけられたような、そんな映画でした。
オリジナルのLust for Life
これが今回プロディジーアレンジのLust for Life
この物語の最後、スパッドを除いた3人は紆余曲折を経て同じ場所へ逆戻りしてしまったような印象を受けました。スパッドは・・・本当に幸せになってほしい。
登場人物の中で、ハッピーエンドかな?と思える人物もいる一方で、年をとった分、それぞれのキャラクタ達に先の無い閉塞感のような物も感じます。それは、もしかしたらエンディングへと続くラストシーンの演出にも現れていたのかも。
Choose life
Choose life. Choose a job. Choose a career. Choose a family. Choose a fucking big television, Choose washing machines, cars, compact disc players, and electrical tin can openers. Choose good health, low cholesterol and dental insurance. Choose fixed-interest mortgage repayments. Choose a starter home. Choose your friends. Choose leisure wear and matching luggage. Choose a three piece suite on hire purchase in a range of fucking fabrics. Choose DIY and wondering who the fuck you are on a Sunday morning. Choose sitting on that couch watching mind-numbing spirit-crushing game shows, stuffing fucking junk food into your mouth. Choose rotting away at the end of it all, pishing your last in a miserable home, nothing more than an embarrassment to the selfish, fucked-up brats you have spawned to replace yourselves. Choose your future. Choose life . . . But why would I want to do a thing like that? I chose not to choose life: I chose something else. And the reasons? There are no reasons. Who needs reasons when you've got her○in?
これは前作からの引用だけど、今回も「選択」についてレントンが今作のヒロインベロニカに対し語る部分があります。下のトレーラーには字幕も付いているので是非観てみてください。
おそらくこの言葉は自分に向けられたもの。どこか諦めているようあり、反抗しているようであり、皮肉を言っているようにも聞こえて、心に突き刺さります。
前作は少年時代についての映画だった。若さの祝福だね。本作は大人になるということ、またいかに僕たちはそれに対処するのが下手か、についての映画だ。そして、子供がいるということや子供がいないということ、もしくは父親達に失望させられる子供達の物語だ。
パンフレットのダニーボイルの監督インタビューより
ああ、「老い」と向き合うのは残酷で難しいなあ。
最後に
この映画は日本じゃあまりヒットしないと思う。
それは、この映画がつまらないからじゃなくて、90年代に青春を過ごしたおっさんが過去を振り返る映画に強いシンパシーを感じられるのは、当時同年代だった人か余程老成した若者だけだろうから。
彼らの過ごしてきた時間や、時代背景なんかを無視して観てしまうと「なんだこのヤク中のおっさん達?音楽が格好良いだけの雰囲気映画だな」って感想を抱くかも。でも、きっとそう思う人たちの中にもレントンは居て、サイモンやスパッド、ベグビーも居る。そう言うクズな自分を認めて共感をする事が出来れば、少なくとも雰囲気映画以上のものになると思う。
英国でヒットしたのは若者も含めて皆がその時代の変化を見て生きてきたからで、当時と比べて力を失ったイギリスの現状やスコットランドの変化にも原因があるからだろうなあ。
この映画は、やはり最初の作品を見てこその映画です。一作目を見ていない人は必ず観ていきましょう。
また視聴済みでも内容を覚えていない人は観直してからいく事を強くお勧めします。そして、できれば歴史を振り返って時代背景や空気を想像して観てみて下さい。
オススメ度
★★★☆
映画単体で見るとこんな感じ。
(★★★★★で満点)
でも、トレインスポッティングを見て、当時そこに何かを感じた世代なら
★★★★★
前作公開当時に青春を過ごし、そして「トレインスポッティング」にシンパシーを感じたことのある、90年代病患者の人にはぜひ見て欲しい。
自分は結婚もして三人も子供がいるおっさんなのに、変わっていない。
自分は結婚して三人も子供がいるおっさんに変わった。
僕にとって、それを突きつけられたような映画でした。
ブルーレイが出たら年一回位のペースで見る映画の仲間入りしそう。来週あたり、劇場にもう一度観に行く気がする。
宣伝になりますが、Huluでは「トレインスポッティング」が視聴可能です。もしよろしければトレインスポッティング2を観る前に無料体験での視聴はいかがですか?